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平成26年特許法等改正の情報

2014年08月05日

 去る730日に開催された、特許庁による法改正説明会に参加致しました。法改正の概要をお伝えします。なお、説明会で配布された資料は、下記URLから入手可能ですので、詳細はそちらを参照願います。

http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h26_houkaisei.htm

 改正法は2014514日に交付されました。一部項目を除き2015514日までに施行されることが定められていますが、説明会開催の時点で施行日の具体的な月日は未だ確定していません。

 改正のポイント

(1) 救済措置の拡充(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)

l 国際的な法制度に倣い、幾つかの手続について期限徒過に対する救済が規定されました。例えば、優先権主張を伴う出願(特41条、43条、43条の2)、優先権主張の書面や証明書の提出(特17条の443条)、新規性喪失の例外の証明書提出(特30条)、分割出願(特44条)、変更出願(特46条、46条の2)、審査請求(特48条の3)、延長登録出願に係る書面提出(特67条の22)、13年分の特許料納付(特108条)、特許料や手数料の返還請求(特111条、195条)などです。

l ただし、大半は「その責めに帰することができない理由」の存在が要件です。当事者に過失がある場合はこれに該当しないと考えられていますので、救済は災害などの場合に限られます。優先権や審査請求にまつわる期限徒過にはそれよりやや緩い「正当な理由」の存在が要件です。この基準による救済の可否は出願人や権利者が相応の措置を講じていたか否かの観点から救済可否の判断がなされます。「正当な理由」はEPODue Care(相当な注意)の基準を参考に規定されたもので、それより緩やかなUnintentional(故意ではない)の基準による救済は今回の改正法に規定がありません。救済措置が拡充されたといっても、EPOやUSPTOに比べると出願人や権利者の過失に対しては厳しいといえます。自然災害の発生(国内外を問わず)等に対する救済措置が整備されたと理解しておくのがよいでしょう。

l 期限満了の日が改正法施行日(未定)以後に到来するものにこの規定が適用され、期限満了の日が改正法施行日までに到来するものは現状通りです。

(2) 特許異議の申立て制度の創設

l  平成6年法改正で導入(施行は平成8年から)され平成15年(2003年)法改正で無効審判制度に統合・廃止された特許付与後異議申立制度がリニューアルされ復活します。

l  従来の特許異議申立と異なる点は、①異議申立に対して特許権者が訂正を行ったとき申立人が意見を述べる機会が与えられる、必ず書面審理(以前は、審判長が「申立てにより、又は職権で口頭審理によるものとすることができる」との規定がありました。)等です。

l  現在(無効審判統合後)と異なる点は、①特許公報発行日から6月以内は(冒認、共同出願違反を除き)誰でも特許異議の申し立てができるが、6月経過後無効審判は利害関係人のみが請求できる、②無効審判は原則口頭審理だが、特許異議の申し立ては書面審理のみ、③申し立て後に申立人が意見を述べる機会は訂正請求がなされた場合のみ等です。

l  異議の申立ては特許庁の明示的アクションが開始される点で、(権利化後の)情報提供制度(改正後も維持される見込み)と異なります。申立ては誰でもできますが匿名は不可です。

l  改正法施行日(未定)以後に特許公報が発行された特許にこの規定が適用されます。出願日は無関係です。

(3)  複数国に意匠を一括出願するための規定の整備(意匠法)

l  現在日本が加入に向けて準備中の「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定(以下、ジュネーブ改正協定)」に基づき、複数国に対して意匠を一括出願することできるようにするための規定が整備中とのことです。

l  従来、外国に意匠出願を行う場合、出願先の国ごとに出願手続をする必要がありましたが、この規定が適用されれば、日本国特許庁を経由して複数国に意匠を一括出願することができ、外国出願のコストを低減することが可能となります。また、日本国特許庁だけでなく、WIPO国際事務局に直接出願を行うことも可能になるとのことです。

l  「ジュネーブ改正協定」が日本国について効力を生ずる日(未定)以後にこの規定が適用されます。

(4)  保護対象の拡充(商標法)

l  商標の定義が見直され、他国で既に広く保護対象となっている、色彩、音、動き、ホログラムおよび位置の商標が、商標法の保護対象に新しく追加されることになりました。

l  新しく追加される商標の具体的な出願要件については、現在特許庁内で施行規則や審査基準をとりまとめ中で、随時明らかにされるとのことです。例えば、音の商標を出願する場合、音を記録したCD等を提出する必要があるとのことです。

l  改正法施行日(未定)以後の出願にこの規定が適用されます。

(5)  地域団体商標の登録主体の拡充(商標法)

l  地域ブランドの更なる普及・展開を図るべく、近年、新たな地域ブランドの普及の担い手となっている商工会、商工会議所及びNPO法人並びにこれらに相当する外国の法人が商標法の地域団体商標制度の登録主体に追加されました。

l  81日にこの規定が施行されました。

(6)  国際機関の紋章等と類似する商標の適切な保護(商標法)

l  自己の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標等及び国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれのない商品等について使用する商標については、当該国際機関を表示する標章と同一又は類似であっても、商標登録することができるようになります。

l  例えば、「FIT」(国際交通フォーラム。Forum International des Transports)や「I. O. O. C.」(国際オリーブ油会議。International Olive Oil Council)等の標章と同一の商標であっても、これらの国際機関と関係があるとの誤認を生じない商標については、商標登録を行うことができるようになるとのことです。

l  改正法施行日(未定)以後の出願にこの規定が適用されます。

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